いつでも呼び出せる“電子脳”を通じて、私たちは脳の仕組みを仮想空間で詳しく調べ、理解を深めるチャンスを手にしはじめているのです。

こうした流れを背景に、今回研究者たちは複数のマウスから何時間もかけて集めた豊富な視覚データをAIに学習させ、まずは全マウスに共通する“コア”を作りました。

さらに、新しく登場したマウスには最小限の追加データだけ与え、自然界の動画だけでなく人工的なパターンにもどれほど対応できる“マウスの電子脳”が作れるかを確かめようとしています。

深掘り解説:マウスの電子脳はどのように作られたか?

全体の「共通のコア」となる脳の処理モデルを作り上げる流れ
全体の「共通のコア」となる脳の処理モデルを作り上げる流れ / この図は、まず多数のマウスから集めた自然動画データを使って、全体の「共通のコア」となる脳の処理モデルを作り上げる流れを示しています。 この共通のコアは、いわば「基礎地図」のように、複数のマウスで共通する視覚処理のパターンを学習するためのものです。 その後、新たなマウスに対しては、コア部分はそのまま固定し、各マウスに合わせた微調整(視点や行動、出力部分の調整)のみを追加で学習させます。 実験では、わずか4分から最大76分の自然動画データだけで、新しいマウスの視覚野の活動を高い精度で予測できることが確認され、従来の個体ごとに一から学習する方法と比べ大幅なデータ効率の向上が実証されました。 また、図は新たな刺激領域(静止画像や合成パターンなど)においても、このファウンデーションモデルがしっかりと機能することを示し、まるで「共通の地図」を少し補正するだけで未知の地域でも正確な位置が把握できるかのような柔軟性を表しています。/Credit:Eric Y. Wang et al . Nature (2025)

マウスの電子脳はどのように作られたのか?

研究チームの最初のアプローチは、まず「たくさんのマウスが、いろいろな映像を見たときに脳のどこがどんなふうに動いているか」を一気に集めて、大きな“共通の地図”を作ることから始まりました。