冷戦時代の雰囲気などを思い出してしまうと、「アメリカは自由主義陣営の盟主としての立場を誇示することにも利益を見出すはずなので国際秩序全体の観点から自由貿易主義の原則を強調してそれを維持するためには・・・といった話に持っていって・・・・」のような考え方も、成立しえたかもしれない。しかしトランプ政権では、無理だろう。

アメリカの赤字が減るかどうか、それだけだ。

ここで、仮に日本のほうがアメリカよりも総合的な国力が大きいとすれば、「あなたの言っていることは身勝手だ」といった姿勢を出すやり方もありうるだろう。だがアメリカの国力は日本を圧倒する大きさであり、その非対称性を前提にして日本の安全保障政策はアメリカに依存している。アメリカが困っていたら、一緒に悩み助けようとするのは、当然である。結局のところ、アメリカが倒れてしまったら、日本こそが非常に困ってしまうのだ。

この文脈において、日本が海外の米国国債保有者の中で最大勢力であるのは、かなり大きな事実である。

アメリカの財政赤字の改善、あるいは財政破綻の回避は、日米両国の共通の利益である。換言すれば、国債保有者としての立場は、交渉を前に進めるためのカードとして使っていいだろう。

アメリカの貿易赤字の解消につながる品目ごとの関税率の設定や、日本側の措置の実施が核心だが、それに結びついた付帯的事項として、日本勢が保有する米国国債を売りさばいたりしないことはもちろん、さらなる政策的な購入の計画ですら、あるいは交渉の材料になるかもしれない。