米国のLNG輸出が前年比プラスで着地したことで、環境問題を理由に規制をしたことはそもそも説明がつかなくなった。結果的には、日本やヨーロッパのロシア依存を促進しただけである。
そして、お金の流れという観点では、やはり軍需産業は無視できない。実際、ロシア・ウクライナ戦争が勃発してから米国のGDPや経済に寄与しているものは、なんと言っても軍需産業である。
米国務省によると、2023年の外国政府に対する軍装備品の販売額は前年比16%増の2380億ドル(35.7兆円)と、過去最高を記録※53)。なんと2024年は更に記録を大幅に更新し、前年比29%増の3187億ドル(47.8兆円)だった※54)。
参考までに、過去最高を記録した2023年の日本の自動車輸出額は21.6兆円である※55)。驚くことに、倍以上の開きがある。
実は、米国の日本やEUへのLNG輸出規制は、お金の流れからすると米国にメリットがあると見ることもできる。上述したように、他の国々へ販売すれば売上減はそもそも回避できる上に、ロシア周辺国への輸出規制によって結果的に供給元となるロシアを富ませ、ロシアに戦争を長引かせる体力を与えることもできるし、EUや日本のロシア依存を高めることもでき、ロシアに対して強硬な姿勢に出にくい状況を作り出し、戦争を長引かせ、軍需産業で儲けることができる。
誤解を避けるために述べるが、この「戦争を長引かせて儲ける」という仮説は、あくまで経済理論上の話で、軍事的なアナリシスではないことを重ねてご承知おきいただきたい。そして注目したいのは、ディールの男と呼ばれるトランプ氏が、このスキームで儲けるつもりは無さそうだということだ。
戦争を単純に止めさせたなら、軍需産業が落ち込み、経済的な損失は大きくなる。損失を極力抑えるために、ウクライナとの鉱物資源権益の合意形成を図ろうとしているのかもしれない。個人的には、戦争を長引かせて儲けるよりも、鉱物資源で儲けて欲しいと願うものである。