安藤:威厳も重要ですが、さらに重要なのは組織の一貫性です。もし私がいなくなれば、中間管理職も全員いなくなる可能性があります。だから管理職も経営者に迎合してはいけないのです。管理職との適切な距離も必要です。
実は多くの成功企業がこうした構造になっています。ただ、その仕組みが明確に理解されているわけではありません。例えば稲盛さんが「社員と距離を縮めろ」「社内で飲み会をしろ」と言っていても、それは彼がすでに「勝ち切った」からこそ言える言葉です。実際には彼自身も社員との間に大きな距離感を持っています。家族経営のような近さを持つ会社は、長期的には成長できないのです。
大企業のCEOが社員と食事をする意味と、50人規模の会社で社長が社員と食事をする意味は全く異なります。社長に会うこと自体が社員にとって特別なことで、日常の組織運営には影響しません。
しかし中小企業の社長が同じことをすると、社長が直接社員の要望を聞いてしまい、「社長がこう言っていた」と中間管理職に伝わり、組織の指揮系統が乱れてしまうのです。
組織改革のアプローチ
尾藤:御社の組織診断サービスはどのように位置づけられているのでしょうか?
安藤:組織診断は私たちのサービスの一部ですが、必ずしも全クライアントに提供するわけではありません。組織改革において最も重視するのは「仕組みで組織を良くする」という考え方です。つまり、ルールに最大限の効力を持たせることが核心なのです。
ルールを中心にしたPDCAサイクルを回すためには、社員がルールに従うという大前提が必要です。そのために私たちが強調するのが「姿勢のルール」です。
姿勢のルールとは、特別な能力を必要としない基本的な行動規範です。挨拶や掃除などがその例で、こうしたルールをしっかり定め、全員が守る状態を最初に作ることが重要です。これができていないと、どんな素晴らしい戦略や戦術も実行されず、PDCAは回りません。その結果、「やる気を引き出すため」のPDCAという本末転倒な状況に陥るのです。