各国が金を買う行為とはドル基軸に対する不安の裏返しでしょう。トランプ氏があれだけ強気発言ができる最大の背景はドルが基軸通貨だからなのです。仮に世の中に政治的に中立で第三国の影響を受けないXという基軸通貨があり各国の為替レートはX通貨を中心に交換比率が決まるとすればドルの価値は大きく剥離するはずです。理由は債務が大きすぎることと国内政治に不安定感があるからです。金を含む多くの商品取引はドル建てですが、これがX通貨建になればどのようなシュミレーションになるか気になりますね。誰も疑うことがないドル紙幣がアメリカのローカル通貨に絶対にならないとは限らないと考えれば金が欲しくなる理由にも納得なのです。
トランプ氏の賭け、ロシアはアメリカにほほ笑むのか?
今週、所属している団体が主催したウクライナ問題に関する討論は日本の有数の研究者を含む学者ら8名ほどが2時間強にわたり議論を繰り広げました。研究者同士の発表や討論はメディアなどの加工がなされず、参加者の特性も限定されているため、より単刀直入で切り込んだ討論が行われるのが特徴です。当然ながら停戦可能性の議論が耳目を集めたのですが、討論ではプーチン氏は妥協する理由がないという論調が主でありました。中でも面白い論点だったのが「いま、停戦したらプーチンは開戦前より不利な条件になる」というものでした。
トランプ氏は高官をモスクワに派遣し、実務ベースでの停戦条件交渉を進めています。ウクライナとの事前折衝と条件を持って交渉に当たっているでしょう。それをロシアがどう判断し、停戦するならどのような条件で妥結するか、という具体的な点を詰めているものと思われます。プーチン氏は停戦について総論賛成、各論反対の立場にあります。停戦には「危機の根本原因除去」が前提と述べています。この根本とは安心安全な隣国であり、ロシアに危機を及ぼさず、できれば親しみを持って協力体制を持つことだろうと察しています。