トランプの常識的な主張に対し、玉木氏のような官僚的な説明で反論しても、外交交渉には勝てない。
問題の焦点は「数字の正確性」ではなく、「制度の異常性」にある。「227%か700%か」といった数字へのこだわりは、本質を外した“数字遊び”に過ぎない。
真に問われているのは、日本が高関税によって事実上市場を閉ざしている構造そのものだ。その現実を象徴する数字として、「700%」という表現はむしろ的確である。それを「誤りだ」と数値だけで反論しても、国際交渉では何の説得力も持たない。
こうした問題の構造に切り込まず、表層的な数値の揚げ足を取るような説明を繰り返す限り、交渉力のあるリーダーとは見なされない。
外交とは、言葉の使い方を含めた問題構造の提示力そのものである。今後、石破首相がトランプと対峙する方法は、このような構造的視点に立てば、いくらでも見出せる。
高関税が象徴する不公正な貿易構造
トランプ大統領が日本に求めるのは、単なる関税交渉の妥結ではない。その本質は「不公正な」貿易構造の是正にあり、アメリカの農家をはじめとする支持層の生活を豊かにすることにあるからだ。
そこで、不公正の象徴として名指しされたのが、高関税を課す日本のコメやその他の農産品だ。
石破政権は、コメ関税という「聖域」を突かれ、対案を示せずに狼狽している。石破首相自身が農水族議員であり、同じく農水族である多くの地方議員たちも思考停止に陥るしかない。
このままでは、日本が報復関税を受けるのは時間の問題だ。主力産業が揺らげば、農業保護どころか、日本の経済基盤そのものが危機に瀕する。農業を守るために他産業を犠牲にする従来の発想から転換すべきときだ。
コメを「安全保障資源」に変える発想
コメという象徴的な火種を、むしろ日米同盟と安全保障を再構築する接点に変える視点が求められる。
日本政府(農水省)は、国家貿易を通じてアメリカ産米や麦を購入できる事業主体である。この既存の枠組みを活用すれば、迅速な発注を通じて、トランプ大統領に即効性のある「ディールの成果」を示すことができる。