尾藤:評価制度についてはどのようにお考えですか?
安藤:多くの企業が評価制度だけを改革しようとしますが、それだけでは本質的な変化は生まれません。会社としての人事哲学やマネジメント方針がしっかり確立された後に、それを表現する手段として評価制度があるべきなんです。だからこそ、私たちはそういうステップを踏んでアプローチします。
評価制度の最も重要なポイントの一つは、「マイナス評価の存在」です。つまり、成果を達成できなければ評価が下がるという仕組みが不可欠なのです。
尾藤:それが日本企業には定着していないように感じますね。
安藤:その通りです。多くの企業は「成果主義人事制度」と謳いながら、実際は数値に基づく客観的評価ではなく、上司の主観に頼った「定性的な成果主義」になっていました。
日本では解雇規制が厳しいという前提条件があります。アメリカのように簡単に解雇できる環境とは異なるため、その制約の中で適切な仕組みを整えた上で評価制度を導入しなければなりません。
だからといって、成果主義自体が間違っているわけではありません。そんなはずがないんです。企業の成果は個々の成果の積み重ねですから、本来は成果で評価するのが当然です。問題は評価の精度や、その前提となる仕組みにあったのです。
この本質を理解している人は非常に少ない。霞が関でも「働き方改革」や「人的資本経営」といった言葉が踊っていますが、構造的な理解が欠けているため表面的な議論に終始し、実質的な改善には至っていません。だからこそ、私たちの役割が重要なのです。
理論的には競合がいないんですよ。市場では「リンクアンドモチベーション」のような、私たちとは逆のアプローチを取る会社が最も近い競合になります。私たちはベンチャー界隈で「モチベーションを高める前にやるべきことがある」という考え方を広められたのではないかと思います。
尾藤:マネジメントにおいて最も重要な能力は何だとお考えですか?