このとき「「どんな本でも全文を読んでから批判するべき」なんて嘘だよ」などとして、SNSでキャンセルを肯定した安堂ホセ氏は、25年1月に芥川賞を受賞するが、発言を掘り起こされ炎上した。これから一生、無数の人に作品を読まれぬまま「だってお前が言ったことじゃん?」と貶され続ける作家人生を送るのかと思うと、胸が痛む。
25年3月には米国のアカデミー賞でも、自分以外のマイノリティに差別発言を繰り返していた、トランスジェンダー女優へのキャンセル(落選)が形をとった。「これはトランス差別! 他者に抑圧を委譲せざるを得ないほどのトランス女性の苦しみを理解すべきだ」云々と頑張る識者のひとりも出てくるかなと思ったが、それもいない。
文字どおり、日本と海外を問わず「ブーム」は終わった。だが、それに乗って美味しいところだけをつまみ、形勢が変わるやだんまりを決め込む言い逃げ屋たちは、いまも各所に潜んでいる。
トランスジェンダー女性は、もう「無敵」でなくなったのか|Yonaha Jun
まだアメリカが民主党のバイデン政権だった1年前に、こんな記事を書いた。安易に「意識の高さ」を誇ろうとする演出があだになって、アカデミー賞授賞式が炎上した不祥事を扱う内容である。
ご存じのとおり、いま共和党のトランプ政権は、むしろそうした「ダイバーシティはキラキラしている☆」といった風潮を全否定すべく、敵意をもってD...
なにより消えないのは、彼ら彼女らが作り出した「学問への不信」であり、社会の分断であり、巻き込まれた人に残された炎上やキャンセルの傷跡だ。当然、償いを支払わせなければならない。