そもそも、日本は24%課税されるとはいえ、為替を考えれば1ドル:145円→117円の円高シフトになるようなものだ。単純計算にはなるが、為替レート145円の時は1万円相当の商品を68.97ドルで米国は輸入する。そこに関税24%分の16.55ドルが上乗せされても、まだ1万円=85.52ドル、つまり1ドル:117円と考えることもできよう。おそらく米国の輸入元が吸収できる範囲ではなかろうか。

日本は「トランプ関税」を利用して、具体的には実体経済の強化と安全保障の強化――この2点を目指すべきである。

確かに株式市場は下落傾向にあり、混乱が生じている。これについて対日貿易交渉の担当にもなったスコット・ベッセント財務長官は「株式市場に起きていることは喜ばしいことではないが、株式の世帯分布を見ると、上位10%が株式の88%を保有していて、次の40%が12%を保有。下位50%の人は負債を負っている。ここをなんとかしないといけない」と発言している*²。

つまり、今は株式市場に多少の影響が出ようとも、実体経済の立て直しを優先するということである。トランプ氏やベッセント氏は、自国に製造業や産業を取り戻し、労働者たちの苦労が報われる社会を取り戻すと再三述べている。金融経済で10%の人たちが儲け続ける仕組みではなく、そうでない大多数の人たちの努力が報われる構造へと変革する――彼らの目にはその様なビジョンが映っているのであろう。変革期にあっては、一時的な株式市場へのショックも致し方ない、と。

またベッセント氏の発言からは、国債の発行などに頼った見せかけの経済ではなく、商品やサービスによって循環する実体経済への回帰を目指していることが読み取れる。

トランプ氏の手法について荒々しいことは否めないが、考え方としては、相互に等しく関税を課しましょうというものなので、なかなか間違っているとは言えない。また、株価が下落しているとは言え、執筆時点(4/8)の日経平均は過去4番目の上げ幅で着地、33,012円となった。5年間の推移を見れば、実際にはまだ高い水準で堪えているし、復調傾向にあると言える。