こうした発想は全て「迎合型」です。短期的な満足を追求するあまり、長期的な成長や自立を妨げているのです。政治で言えば、本来、国力をどう上げるかを考えるのがリーダーの仕事なのに、この瞬間の民衆を喜ばせればいいという発想になる。これが民主主義の成れの果てであり、今の日本のマネジメントの状況で、だからどんどん弱くなっているんです。
会社の方針と権限委譲
尾藤:会社の方針については、どのようにして社員に伝えられているのですか?
安藤:私たちは「こういう会社です」ということを最初にしっかり伝えます。そして、その方針に賛同する人材を受け入れるというスタイルを取っています。実は私自身、面接にはほとんど関わっていないんですよ。
尾藤:面接に参加されないのですか?それは意外ですね。
安藤:はい。現場に全て権限委譲しているんです。新卒採用は会社設立から3年ほどは私も関わっていましたが、中途採用については2年目以降は一度も面接していません。最近は新卒も現場に完全に任せています。この考え方は会社全体に浸透していて、自然な流れになっているんです。雨と同じようなものですね。
尾藤:雨と同じ、というのはどういう意味でしょうか?
安藤:雨が降ることを嫌がっても仕方がないでしょう?それと同じで、自然な流れとして受け入れるということです。権限委譲は私たちの組織文化として定着しています。
尾藤:他のコンサルティング手法と比較して、安藤さんのアプローチの違いはどこにあるのでしょうか?
安藤:30数名の組織に対して従来型のアプローチを取るのは、正直かなり非効率です。私たちの最大の違いは、「個人の属性を変える」という発想ではなく、「組織の枠組みを変える」という発想を持っていることです。
つまり、個人にあまり焦点を当てていないんです。組織内で問題が発生した場合、個人の問題点を探すのではなく、「なぜその問題が組織として発生したのか」という構造的な原因を探ります。それが私たちのアプローチの独自性だと思います。