つまりこの球を使えば、目の前にある量子の状態がどんな感じにあるかをピタリと示すことができるのです。
私たちが、色と明るさと方向などを使ってグラフにまとめるのと同じように、量子状態のあり方を視覚化するための一種の三次元座地図とも言えます。
しかし、なぜわざわざ三次元という舞台が自然に出てくるのかという根本的な問いには、昔から多くの物理学者が魅了されてきました。
不思議な量子たちの状態が、人間が認識できる3次元に収まる義理はないはずです。
それこそ5次元や11次元に浮かぶ球体として数学的に出現したかもしれないからです。
もちろん、「二つの状態(0と1)」しかないのではなく「三つ以上の状態(0と1と2、あるいはさらに多く…)」を基本として持つ量子系を想定すると、その状態空間は単一量子ビットよりも高次元になります。
その場合シンプルな三次元モデルでは収まらなくなり、より高次元の幾何学的対象を使って状態を表現しなければなりません。
ところが0か1かの「単一量子ビット」は、あくまでも三次元球体というかたちで整理できるわけです。
ですが最も奇妙なのはこの先にあります。
ここからは、量子ビットに対して一定時間ごとに測定を行っていきます。
するとその測定結果から「時間から空間が出現する」とする結論が得られるのです。
三次元空間は「時間産」!? 驚きの研究

「量子ビットを時間にもとづいて測定する」
そう言うと量子力学をちょっと齧った人の中には、
「測定結果は単なる確率分布に過ぎないのだから、時点を変えて測定し相関を調べること自体にどんな意義があるのか?」
と疑問に思うかもしれません。
確かに、どれか一つの時点で測定した結果を見るだけなら、「結果Aを得る確率は○○%」という確率論で片付いてしまい、そこに“時間”が関わる余地はあまり感じられないでしょう。