しかし、量子系が連続的に進化する仕組みを考えると、話は少し変わってきます。
量子ビットの状態は、何もしなければシュレーディンガー方程式(量子状態が時間とともにどう変化するかを決める基本的な方程式)に従って連続的に変化しますが、測定を行えば波動関数の収縮(観測によって量子状態が瞬間的に変化する現象)によって状態が突然変化する可能性があります。
また弱い測定という量子状態を崩さないまま、ある程度結果を覗き見て予測することも可能です。
(※確定していないため、あくまで確立が高くなるだけです)
つまり「ある時点での測定結果」と「少し時間が経過した後の測定結果」は、単に同じ確率分布が再現されるだけではなく、測定を挟んだことによる状態変化も起こり得ます。
もし量子ビットが「0の状態」と「1の状態」のあいだを何らかの仕組みによって連続的に振動しているなら、時点をずらして測定すると、まるで振り子や波のようなパターンで結果が変わっていくはずです。
そこにさらに測定による“介入”が加わると、連続的な進化とは別に、観測の瞬間に状態が不連続に変化するかもしれない。
こうした要素をすべて含めて考えると、時点Aの測定結果と時点Bの測定結果が「どれくらい似通っているか」「あるいはどう違うのか」を調べることは、量子系の動的な特徴を理解するうえで不可欠なのです。
たとえば、人間の記憶で「昨日の出来事」と「今日の出来事」のあいだにどれだけ共通点があるかを思い出すのに似ています。
昨日と今日の測定(記憶)の結果が大きく違っていれば、「その差を生み出したプロセスは何か」という視点が自然と生まれます。
量子系の場合も同様に、時間的な相関を丁寧に追うと、状態がどのように移り変わったのか、あるいはどのような“不変量”があるのかを見出せるわけです。
そしてこのように時間だけに依存した量子の測定結果を集めて分析すると、どういうわけか三次元の距離や角度を考えるときのルール(ユークリッド幾何学)と対応してくる可能性がありました。