成長のカギを握る「若年富裕層」とは?
若い時分から手厚い外商サービスを利用できるのは、うらやましいの一言だ。そんな彼・彼女たちには、どんなバックグラウンドがあるのだろうか。瀬尾氏によると、その属性は大きく3つに分かれるという。
「もちろんいろんな方がおられるのですが、その中でも多いのは、親御さんの世代から外商をご利用いただいている方です。ご本人も外商に慣れ親しんでいて、お子様が成長・自立されるなかでご自身が入会されるという流れですね。こういう方は30代、20代でもおられます。
このほか、ご自身で起業をして事業で成功されて、外商にご入会される方も少なからずいらっしゃいます。あとは医師や弁護士、税理士といった、資格職の方も多いです。こういった方々はとにかくお忙しいので、自分が店舗に出向く必要がなく、係員がご提案やお取り寄せなどこまめに動いてくれる外商のサービスを魅力に感じて、ご入会いただいていることが多いと思います」
外商のお得意様は、ニーズをとらえて提案をしてくれる「コンシェルジュ」、そして自分に成り代わって動いてくれる「エージェント」の面に魅力を感じているようだ。その上で、百貨店が外商お得意様に提供できる価値として、「安心・安全」が非常に大きいと瀬尾氏は強調する。
「今はネットショッピングで何でも買える時代ではありますが、たとえば美術品のような高額の商品を買う時には、値付けが正しくリーズナブルなのか、モノは確かなのかといった部分は、価格が高くなればなるほどお客様は不安に思われると思うんです。そこで私どもは、長年の大丸ブランド、松坂屋ブランドならではの『安心感』をご提供できますし、価格が適正でモノが確かであるという『安全』をご提供できます」
大丸松坂屋百貨店が外商お得意様に提供する「安心・安全」は、サービスやコンテンツの提供にあたって、幾人ものプロの目による目利きが働くことによって担保されているという。たとえば美術品であれば、まず外商お得意様についている外商担当者がいて、社内の美術品担当のバイヤーがいる。さらに、その取引先、仕入れ先にも専門家がいて、専門家同士の情報交換や目利きの共有が行われている。このようなプロセスを通じて真贋の鑑定がしっかり行われ、販売価格もリーズナブルで間違いがない、適正価格に落ち着いていくという形だ。
このほか、若年富裕層ならではの購買傾向などはあるのだろうか。
「購入される商品については、若いかたに限定して何か受けのいいものがあるという感じではありません。むしろ違いがあるのはサービスのほうですね。先ほどお話したLINE WORKSでお客様が求める商品の画像が届き、外商係員がそれを探して確保、販売させていただくという流れが増えています。
商品の情報はネットでいくらでも取れるようになっていますから、以前よりも情報感度が高くて詳しいお客様が増えています。とはいえ、見つけたものをそのままオンラインでポチッと購入するのは、価格が高くなればなるほど慎重にならざるを得ません。そこで、ネットで調べた商品を実際に見てみたいからと、外商を通じて取り寄せたものをご確認のうえ、購入していただくことが多くなっています。
あとは限定商品を特別にご提案したり、なかなか手に入らないものを確保したりという部分ですね。もちろん何でも100%、必ずお応えできるわけではないですが、希少価値が高くて店頭には並ばないものをご提供できる、このようなサービスにもご期待いただいていると感じます」