事業環境と顧客の変化をとらえ、ピンチをチャンスに変えて成長を遂げる
直近5年間で約30%もの伸びを見せている外商部門の勢いは、社内における売上シェアという点でも確認できるという。大丸松坂屋全体の売上高における外商の割合も、2019 年は 23% を占めていたのが、2024年には4ポイントアップを遂げ、27%に達した。
「当社の中でも、外商部門はめざましい成長分野だと言えます。この数年で、外商部門の中でも特に変わってきたのが、売上高に占める50歳以下のお客様の割合です。いわゆる『若年富裕層』のご利用が増えていて、顧客の若返りが起こっています。これに対応する形で、外商部門の接客手法も変化してきている面があります。
具体的には、オンライン対応の増加です。コロナ禍で人と人との接触が制限された影響もあり、それ以来直接お客様のお宅に訪問する機会が減少しました。苦しい時期でしたが、その中で接客ツールとしてLINE WORKSの活用が始まり、お電話やメールなども含めアポ取りから商品がお手元に届くまで、お会いせずに完結することが珍しくなくなりました」
古くから続く外商も、時代や顧客の変化に対応した進化を遂げているということだ。その大きな要因である、若年富裕層の増加にはどのような背景があるのだろうか。
「外商部門では2021年から、外商カードへご入会のハードルを下げるためその具体的な施策として、ネット上で外商とのお取引をお申込みいただける『オンライン入会』を開始しました。それ以前は、すでに外商でお取引いただいているお得意様からのご紹介であったり、あるいは当社のほうからご招待させていただいたりと、入会にハードルがありました。それを取っ払って、どなたでもお申込みいただけるように仕組みを大きく変えたのです」
ネットで「大丸松坂屋百貨店 外商」というワードで検索してみると、外商サービスが利用できる「大丸松坂屋お得意様ゴールドカード」の入会ページがヒットする。これに申し込むことで、誰でも外商の門をたたくことは可能だ。ただし外商カードの発行には審査があり、実際には誰でも入会できるわけではないという点で、引き続き外商のステータスやサービスのクオリティは保たれているという。
「若いお客様ですと、なかなかお知り合いからの紹介で入会していただくことは難しいですし、こちらからご招待するきっかけも少なくなります。また、仮にお知り合いをご紹介していただいたとしても、その方が審査で入れなかったりすることがないわけではありません。このような事情もあって、人のつながりの中で比較的お客様とご縁をいただくのは難しかったんです。オンラインで門戸を開いたことでこうした制約が取り払われて、取引をご希望される若年富裕層とのニーズが合致した結果、ご利用の増加につながったと考えています」