今回の研究で重要なのは、この実験が時間を置いて繰り返し行われた点です。

この研究では、最初の「マインドゲーム」の後、約5週間後に「コイン投げタスク」が行われ、さらにその3年以上後に「くじ引きタスク」が実施されているのです。(追加実験では参加者数は数百人規模に減っています)

そしてこのように、時間を空けて同じ参加者に複数回実験を行った結果、非常に興味深い事実が見えてきたのです。

嘘をつく行動(不正)はその人の性格に依存している

実験を行った結果、嘘をつく行動は一貫して維持されることが確認されました。

つまり嘘で利益を得た人たちは、その後どれだけ期間を空けても、一貫して嘘をつく選択を繰り返したのです。

この実験では特に嘘をつくことに罰則を与えていません。そのため人によっては、罰則がないならそりゃ利益になるなら嘘をつくのは当たり前だろうと考えるかもしれません。

しかし、こうした実験デザインも研究者たちの意図している部分です。

実は今回の研究では、性格特性についても詳しく調べられています。すると誠実性(正直さや倫理感)が高い人は、どんな状況でも嘘を避ける傾向が強く、誠実性が低い人々は、金銭的利益や面倒な作業を避けるために嘘をつきやすい傾向が見られたのです。

つまり、今回のような嘘を簡単につける状況で、しかも嘘をつけば利益が得られる状況でも、誠実性の高い人は一貫して嘘を避けていたのです。

Credit:canva

一方で、誠実性が低い人達は、どれだけ期間を空けても、一貫して嘘をつく選択を繰り返しました。

この研究の結果は、嘘をつく行動が人によって一貫しているという事実を示した点が重要なポイントです。

つまりその人の状況や考え方が変化する期間を置いても、この行動パターンが繰り返されるということは、不正に対して十分な罰則などの介入がない限り、その人の行動は基本的に変わることがないということを示しています。