これは、ゲームの体験が視覚・聴覚だけでなくコントローラーの配置や持ち心地など多感覚的なノスタルジーと結びついている可能性を示しています。
そしてアンケートによる「幸福感」や「心のつながり感」との比較では、レトロゲームをよく遊ぶ人とあまり遊ばない人で、長期的な幸福度に大きな差は見られなかったとのこと。
一方で、短期的には気分が高まったり、人によっては思い出の中の友人や家族との結びつきを強く感じることもあるかもしれないといった示唆が得られています。
つまり、“レトロゲームをやれば人生が劇的にハッピーになる”というわけではないものの、特定の状況や一時的な感情の上昇には寄与しそうだ、というわけです。
なぜこの研究が革新的なのか?
従来のゲーム研究やノスタルジア研究では、「どんな世代が、いつのゲームを、どういう気持ちで遊んでいるか」を細かくデータで追跡するのは非常に難しいとされてきました。
自己申告に頼るとプレイ時間や昔の記憶は曖昧になりがちですし、どのハードをどれくらいのペースで遊んでいるかなど、外部からは把握しにくかったのです。
しかし今回のプロジェクトでは、Nintendo Switchのプレイログという客観的な“デジタル足跡”を活用し、かつ心理的な指標も同時に測ることで、レトロゲームとノスタルジーとの関係がより正確に浮き彫りになりました。
いわばゲーム研究の新しい視点を示す“リアルタイムの大規模観察”であり、メディア研究においても画期的な取り組みだといえます。
なぜ10歳の頃にしたゲームが「懐かしさ」をもたらすのか?

10歳前後という年齢には、私たちの記憶や心の働きにおいて特別な要素がいくつも重なっています。
しばしば「リミニッセンスバンプ(Reminiscence Bump)」という言葉が使われますが、これは人が一生のうちで特に鮮明に覚えている思い出が10歳から20代前半に集中する現象を指す概念です。