ライバルが減ることでより長く生き、多くの花や実をつけるチャンスが増し、それを何世代も繰り返すうちに“雷に強い大木だけが森を支配する”という状況が生まれる可能性もあるのです。

もしこの現象が他の森林や別の大陸でも起こっているとしたら、雷は森の命運を左右する大きなカギのひとつになります。いまのところ「破壊的」というイメージが強い雷ですが、耐雷性を持つ木を増やし、森の風景を激変させる要因にもなり得ます。

実際、気候変動によって将来的に落雷の頻度や規模が増すとの予測もあり、そうなれば Dipteryx oleifera のような耐雷樹がますます優位に立つかもしれません。逆に、雷に弱い種は大きく育つ前に雷で倒されることが頻発すれば、森林の構成が大きく変わるでしょう。

私たちはまだ、落雷が森の将来をどこまで変え得るのかを正確には知りません。

しかし本研究のように、電磁波による精密な測定とドローンを駆使した新手法で落雷を捉え続ければ、世界各地の森で「本当に雷に打たれるほどメリットがある木」がどの程度存在するのか、そしてそれがいかに生態系のバランスを塗り替えていくのかが、少しずつ明らかになっていくはずです。

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元論文

How some tropical trees benefit from being struck by lightning:evidence for Dipteryx oleifera and other large-statured trees
https://doi.org/10.1111/nph.70062

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。