ツルは木の成長を妨げることで知られますが、電流の通り道として優先的に被害を受け、エボエ(Dipteryx oleifera) はむしろ身軽になるわけです。
さらに、大径の個体ほど生涯で平均5回ほど落雷を受けると推計されており、その都度ライバルを減らせば、寿命と繁殖機会が大幅に伸びる可能性が浮上してきます。
実際、研究チームの数理モデルでは、この耐雷性が寿命や種子生産量(fecundity)を最大で14倍程度に増やすシナリオが試算されました。
このように大規模かつ詳細な調査によって、研究者たちは「一見危険な落雷が特定の樹木には大きなアドバンテージをもたらす」という仮説を裏づける証拠を示しました。
雷による死者数や破壊力だけでなく、「雷を得意とする木が存在し、生態系の競争バランスを塗り替え得る」という新しい視点を、定量的なデータと映像から見いだした点に大きな意義があります。
また、Dipteryx oleifera 以外にも少数ながら生き延びた大型樹が認められたことも、同様の戦略を持つ種が他にもいる可能性を示唆しています。
雷が選ぶ勝ち組と負け組:あなたの知らない森林の競争

今回の発見は、長らく「雷は森を破壊するだけ」と思われてきた常識を大きく揺るがすものでしょう。
もともと雷といえば、容赦なく幹や枝を裂き、周囲の樹木を巻き添えに大量に枯らす“天災”として恐れられてきました。しかし今回の結果からは、「そうした破壊力が、耐雷性を備えた木にとってはむしろ恩恵に変わる」という意外な一面が浮かび上がっています。
特に Dipteryx oleifera のように立て続けに落雷を受けても大ダメージなく生き延びる巨木は、“雷によって競合相手が排除され、日光や養分を独占する”という生存戦略をまるで獲得しているかのようです。
たとえば、大型の木ほど稲妻が落ちるリスクは高いのですが、その分周囲が電流のとばっちりで倒れれば、結果的に自分だけが高くそびえて日光を存分に浴びられる。まるでサバンナのライオンが他の捕食者を駆逐し、自分だけが自由に狩りを楽しむ構図のようにも見えます。