一部の研究者はこの現象に注目し、「たまたま雷に耐えただけではなく、実は雷がその樹木にとって有利に働いているのではないか」と考え始めます。
落雷といえば森をかき乱す“破壊神”というイメージですが、同じ雷が特定の木にとっては“味方”になり得るとしたら、実に奇妙な仮説です。
これまで雷の影響を正確に把握することは難しく、「雷によって死んだ木」の記録が中心でした。
しかし近年、雷が落ちる瞬間に出る電磁波を分析して落雷地点を高精度で特定し、さらにドローンを使って上空から生存状況を確認する技術が実用化され、どの木が雷を受けてどうなったのかを詳細に追跡できるようになりました。
すると、周辺のライバル樹木やツル植物が次々と枯れていく中、中心の木だけは驚くほど軽微なダメージで生き延びている事例が数多く見つかったのです。
研究者たちはますます「雷の正体はただの破壊者ではなく、森林内の競争関係を大きく変える力を秘めているのではないか」と強く関心を抱くようになりました。
特に近年では「より高い樹木ほど雷に打たれるリスクは大きいが、そのぶん周囲のライバルが一斉に排除され、結果的に自身の生存や繁殖が有利になるかもしれない」という仮説も提起されています。
一見、降りかかる“災難”にしか思えない雷が、一部の木にとっては“ありがたい潤滑油”のように機能している可能性があるわけです。もちろん、単なる逸話や偶然の例ではなく、長期間にわたる系統的な観察データが必要であり、さらにメカニズムや他種との違いも解き明かさなくてはなりません。
そこで今回研究者たちは、パナマの熱帯雨林において雷がいつ、どの木を直撃し、打たれた木がその後どう成長して種子を残すのかを徹底的に追跡する、前例のない大規模調査を始めたのです。
雷が「ご褒美」になる木の謎

研究チームが最初に導入したのは、雷がどの樹木を直撃したかを迅速かつ正確に割り出す“落雷追跡システム”です。