しかし、大規模データによって「長時間労働が出生率の低下に関わる重要要因」として浮上したことは、大きな意義があります。
経済的支援や住宅政策だけでなく、残業を減らし、柔軟な勤務形態や十分な育児休暇を整えることも少子化対策として不可欠だと強調されたのです。
つい「将来の人口構成」や「社会保障費の増大」といった数字だけに目が行きがちですが、実際に子どもを育てるかどうかの判断は、身近な暮らしの中で感じる“時間のゆとり”や“精神的安定”といった要素に左右されがちです。
国や企業、自治体がそれぞれできることを真剣に考え、実行に移していくことで、「子どもが欲しい」と望む人の背中を押せる社会を作ることができるのではないでしょうか。
「仕事か家庭か」の二者択一ではなく、「仕事と家庭をどうバランスよく両立させるか」。こうした視点が、少子化を食い止めるカギになるのかもしれません。
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元論文
Reasons for the continued decline in fertility intentions: explanations from overtime work
https://doi.org/10.1080/19485565.2024.2422850
ライター
川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。
編集者
ナゾロジー 編集部