さらに、女性の方が男性より残業に対して敏感に反応するという傾向も見られました。
中国でも「子育ては女性が担う」という社会的プレッシャーが根強いため、長時間労働が女性に及ぼす影響はより大きいと考えられます。
また、結婚していない人ほど「これから家族を持つかどうか」を決める段階で長時間労働を理由に躊躇する可能性が高くなる点も印象的でした。
動物においても、厳しい環境下でのストレスが出生率に深く影響を与えることは多くの研究で示されています。
たとえば、エサの不足や気候変動、捕食者の増加などによって動物が慢性的なストレスを感じると、生殖行動そのものが抑制される場合があります。
これは、体力を温存して生存を優先するためにホルモンバランスが変化し、交尾や繁殖に向かうエネルギーが減ってしまうからだと考えられています。
実際に、野生生物の生息環境が損なわれた地域や、家畜でも飼育条件が悪化した場合に、繁殖率が顕著に落ちる例が数多く報告されています。
こうした現象は、人間における長時間労働や不規則勤務が出生意欲を下げる仕組みにも通じる部分があり、「厳しい環境=生殖コストの回避」という生物学的な傾向が、種を問わず存在するといえるでしょう。
なぜこの研究が革新的といえるのか?
第一に、中国全土をカバーする大規模かつ多様なデータに基づき、労働時間だけでなく勤務形態の細分化まで踏み込んでいることが挙げられます。第二に、「20時間未満で出生意欲が上がり、40時間を超えると大幅に下がる」という具体的な労働時間の区切りまで示している点は、今後の少子化対策や働き方改革を考えるうえで大きなヒントとなるでしょう。これらの包括的かつ多角的なアプローチは、中国のみならず世界的な少子化対策にも影響を与える可能性があります。
仕事と家庭は両立できるのか――迫られる“人生”の選択
