こうした時間的プレッシャーは家庭生活に予想以上の負担をかけるという研究報告は、日本やアメリカ、ヨーロッパなど世界各地からも上がっています。
しかし、中国ほど地域差が大きく、かつ大規模に検証した例はこれまであまりありませんでした。
また、中国の若い世代からは「経済的には豊かになったけれど、心と時間の余裕がない」という声が聞こえます。
キャリアアップのために必死に働きつづけるうちに、いざ子どもを育てようと思ったときに果たして体力や精神的余裕が残るのだろうかという不安が膨らむ──これはある意味、“砂漠を歩き続けるような労働環境で、家族というオアシスを探す”かのようです。
こうした疑問を解き明かすために、中国全土を対象とした大規模調査のデータを用いて、長時間労働と子どもを持つ意欲の関係に切り込んだのが今回の研究です。
子どもを望む時間すら奪われる労働漬けの生活

研究チームは、中国家族追跡調査(CFPS)の2020年版データを活用し、約2万人のサンプルを分析対象としました。
CFPSは年齢・性別・年収・健康状態・家族構成といった多方面の情報を集めているため、「労働時間」と「子どもを持ちたい意欲」が他の要因とどのように関連するかを詳細に検証できます。
さらに、省や都市ごとの地域差も視野に入れながら、“週40時間超”の残業が出生意思に与える影響を調べました。
研究デザインのユニークなポイントは、単に「労働時間」だけでなく、夜勤・週末勤務・オンコール(24時間連絡が取れる状態)など働き方の違いを細かく分類したことです。
夜勤による生活リズムの崩れ、週末勤務で失われる家族との時間、オンコール勤務の精神的ストレス──これらがどの程度、子どもを持つ意欲を下げる要因になっているのかを一括して分析したのです。
すると、労働時間をより細かく区切り、週20時間未満の場合はむしろ出生意欲が高い傾向があることが示されました。