今回の研究が示唆するのは、私たちが「これは間違いなく正しい」と感じる道徳的確信には、主に二つの力が同時に働いているということです。
一つめは、「これは絶対に許せない」「これは何が何でも守るべきだ」といった強い感情的インパクト――脳が“重大事だ”と警鐘を鳴らすシステムが稼働する部分。
たとえるなら、火事のサイレンが一気に鳴り渡り、「これだけは最優先だ!」と全身を奮い立たせるような感覚です。
二つめは、同時に走る論理的なプロセス――「なぜこれは許されないのか」「どうしてこれが正しいのか」を自分の中で整理する認知の働きです。
いわば、燃え上がるエネルギー(感情)と、そのエネルギーに理屈を与える制御装置(認知)がタッグを組んで、「これは絶対だ」という確信を生み出しているわけです。
ところが、この“道徳エンジン”を安全運転するためにはブレーキにあたる仕組みが必要となります。
それこそが自分の思考の正しさを点検する「自己認識力(メタ認知)」です。
例えば何かに強い正義感を持ったときでも、「ちょっと待てよ、どこかに思い込みや誤解がないだろうか」「相手には何か別の正義があるんじゃないか」と自分の信念を冷静に振り返る能力があれば、過剰な興奮に流されることを防ぎやすくなります。
一方で、もし自己認識力が弱いと、脳は「自分こそ正しい!」という思い込みをまるで報酬のように扱い、“アクセル全開”で突き進みがちです。
そうなると、他者の声に耳を貸さず、「これが正義なのだから、譲る必要などない」と頑固な態度を取りやすくなってしまうでしょう。
今回の研究がおもしろいのは、「道徳的確信」「感情の強さ」「論理的制御」といった要素に、さらに自己認識力が加わったとき、脳内の仕組みがどのように変化するかを具体的に示した点です。
メタ認知が高い人は、たとえ「これは絶対に正しい」と感じても、その“サイレン”に従いつつ、必要なら音量を下げる術を心得ています。