今回の実験では、まず参加者に多数の社会・政治トピックをオンラインで提示し、単なる「好き・嫌い」を問うのではなく「どれだけ道徳的に正しい(あるいは許せない)と思うか」という“道徳的確信”の度合いまで回答してもらいました。
また別のタスクでは、「自分の判断にどれだけ自信があるか」を測ることで、自己認識力(メタ認知)の高低を数値化しています。
次に、参加者はfMRI装置の中で「デモや抗議行動の写真」を眺め、写真左・右のグループのうちどちらをより支持するかを数秒以内に選択しました。
たとえば左が「環境保護法案に賛成」、右が「死刑制度に反対」といった具合に、時には全く異なるテーマ同士が並ぶこともあります。
このときの脳活動を計測することで、「道徳的確信」「支持・不支持」「自己認識力」が絡み合う瞬間を捉えるわけです。
結果として、道徳的確信が強いトピックほど判断が早く下される傾向が確認されました。
「これは絶対に正しい!」「絶対に許せない!」と思うほど、ほとんど迷わず決断してしまうようです。
さらにfMRI解析では、前部島(aINS)や前帯状皮質(ACC)など“感情的な重要度”の検知に関わる領域に加えて、外側前頭前野(lPFC)など“認知的制御”に関わる部分まで活性化しているのがわかりました。
これにより、「これは大事だ!」と強く反応するだけでなく、「それをどう行動に移すか」の面でも脳がフル稼働しているとみられます。
特に注目すべきは、自己認識力(メタ認知)が低い参加者ほど、道徳的確信に関連する脳の反応がいっそう強烈になるという点です。
価値評価に関わるvmPFC(腹内側前頭前野)や報酬系の活動が高まり、「自分の意見は正しい」という感覚が、まるで勝利の報酬のように強化される可能性が示唆されました。
つまり、自己認識力の低さが、「自分が正しい」という確信に拍車をかけ、脳内の“盛り上がり”を増幅させているわけです。
まとめ:自己認識力がもたらす柔軟性
