アーバニアックさんはこの試合で初めてボールボーイを務めたというが、その働きはドイツ国中で称賛された。その機転も大したものだが、APTを意識していたドイツ代表イレブンの集中力の賜物ともいえる得点だ。

また、バルセロナ(2008-2012)、バイエルン・ミュンヘン(2013-2016)を経て、現在マンチェスター・シティ(2016-)を率いる名将ジョゼップ・グアルディオラ監督は、よくピッチサイドにいるボールボーイに声を掛け、素早くボールを渡しリスタートを促すよう“指導”する姿を見せている。

そして現役最後のバイエルン在籍時代にその姿に感化された元スペイン代表MFシャビ・アロンソ氏(2017年引退)は、現在、監督を務めるバイエル・レバークーゼンでのホームゲームにおいて、対戦相手に休む暇を与えず、APTを増やす目的でボールボーイを増やすという試みを行っているという。

しかし欧州5大リーグともなれば、メディアやファンの関心事は、スター選手のゴール数やパフォーマンスであり、APTはあくまで結果論として扱われている。それを逆利用するような戦術や指揮官もいるが、あくまで“例外”だ。


フェリックス・ツバイヤー審判員 写真:Getty Images

Jリーグ、APTを増やすことが目的化

対してJリーグは、その成長をアピールする目的でAPTを可視化し、発信することで試合の質を担保しようとしている。結果、APTを増やすことが目的化してしまい、ファウル基準の曖昧さを生み出すという本末転倒な現状を生んでしまっている。

JリーグにはJリーグの良さがあったはずだが、欧州に近付くための目標としてAPTを重視したことで、逆にスタイルが確立されていない“発展途上”であることが詳らかになるという皮肉な状態となっている。

Jリーグの2023シーズンの平均APTは約55~58分だったが、以降は増加傾向にある。これは審判の質向上や、選手のフィットネス面の向上によるものだ。ファウル云々の話ではない。