これは、心理的な先入観や「薬を飲んだから効いているはず」という思い込みを排除するための“二重盲検”方式です。

まるでコインを投げてAチームとBチームに分け、それぞれに“味がそっくりなお茶”を飲ませるイメージを想像すると分かりやすいでしょう。

ただし、中には有効成分が含まれているため、本当に“感情や判断力”が変化するのかを客観的に測れる仕組みです。

その後に行われた“メインイベント”が、BART(Balloon Analog Risk Task)というコンピュータ上の風船ゲームでした。

画面にはしぼんだ風船が表示され、参加者はボタンを押すごとにプシュッ、プシュッと空気を入れていきます。

風船を膨らませれば膨らませるほど「仮想のお金」がもらえますが、ある時点で突然パンッと破裂し、それまで貯めた分がゼロになるというリスクも伴うため、参加者は「どのあたりで止めるか」を自分で判断しなくてはなりません。

このタスクはあたかも薄氷の上を歩くようなドキドキを作り出すので、人がどの程度リスクをとりたがるかをビジュアルに捉えられるのです。

加えて研究チームは、アンケート調査でもリスク評価を測定しました。

たとえば「友人の秘密をSNSで暴露したら?」や「危うい投資案件に資金を全投入すると?」といったシチュエーションを思い浮かべてもらい、「どのくらい危険か」「どのくらい魅力的か」を直感的に数値化させる形式です。

こうすることで、行動面だけでなく、頭の中でのリスク認知も把握しようとしたわけです。

結果はとても示唆的でした。

アセトアミノフェンを飲んでいたグループは、そうでないグループよりも、風船をより大きく膨らませる(=リスクをとる)傾向が強い場合が多かったのです。

同時に、危険度を低く見積もる(「これくらいなら大丈夫」と思う)回答も増える傾向にありました。

ただし3つの実験のうち1つは明確な差が見られなかったため、「すべての状況でリスクが増大する」とまでは言えません。