トランプ大統領は1月20日に就任するや、国内面では石油、ガス、鉱物資源の国内生産の拡大を図り、インフレ抑制法(IRA)に基づくクリーンエネルギー支援を停止・縮小し、対外面では米国産エネルギーの輸出拡大によるエネルギードミナンスの確立、パリ協定からの離脱等の方針を矢継ぎ早に打ち出した。

3月最終週、米国を訪問し、ブレークスルー研究所、ハーバード大学、戦略国際問題研究所(CSIS)、米国商工会議所、ヘリテージ財団等の専門家とトランプ政権のエネルギー温暖化政策の現状、課題について意見交換を行った。

The White Houseより

エネルギー・温暖化政策は満点、トランプ関税は不合格

それぞれに「トランプ政権のエネルギー・温暖化政策に10点満点で何点つけるか」との質問をぶつけてみた。

共和党系のシンクタンクであり、「プロジェクト2025」としてトランプ候補に政策を提言しているヘリテージ財団は、国内エネルギー生産の拡大、環境規制の緩和、インフラ許認可プロセスの迅速化、クリーンエネルギーへの支援カット、パリ協定離脱も含め、10点満点中の10点と最高評価であった。産業界の利害を代表し、共和党に近い米商工会議所も10点満点中の8点と高評価である。

他方、超党派のCSISはエネルギー生産拡大、規制緩和にはプラス評価だが、温暖化問題に背を向けることにはマイナス評価で総合6.5点をつけた。

エネルギー・温暖化政策の点数については違いがあるが、皆の意見が一致しているのはトランプ関税への強い批判であった。トランプ支持ということでは最右翼であるはずのヘリテージ財団ですら「トランプ関税の成績はFだ」と明言していた。

トランプ関税は相手国の負担になるだけではなく、米国の国内物価を引き上げ、消費者の負担になる。更に世界経済に対する引き下げ圧力となり、エネルギー需要の減退、価格低下につながる。

トランプ政権はDrill Baby Drill を合言葉に石油ガス生産拡大のための条件整備(連邦所有地の開放、規制緩和等)を進めているが、石油価格が低下すれば事業者にとって生産拡大のインセンティブにならない。ベネズエラからの石油輸入に関して二転三転するトランプ大統領の発言は、石油ガス産業の事業環境の不透明性を増しているとのコメントも聞かれた。