まだ「復興」など程遠い状態で、特にいわき市の北の相双地区は全町避難を強いられた住民も多く、その多くがいわき市に住まいを移したことで地価や家賃、物価の高騰という事態を生んだ。爆発事故を起こした福島第一原発の廃炉作業もまだ手付かずの状態で、サッカーのトレーニングセンター「Jヴィレッジ」も原発事故対応の拠点とされた。再び芝が張られ「Jヴィレッジスタジアム」として再オープンしたのは2017年のことだ。「正直なところ、サッカーどころではない」というのが当時の市民感情だった。

しかし、いわきFCは5年連続昇格で2020年にJFLにまで到達。その間、2017年の天皇杯にはJ3福島ユナイテッドを破り福島県代表として出場すると、2回戦でJ1北海道コンサドーレ札幌を破るジャイアントキリングを演出した。

クラブは「Jリーグ百年構想クラブ」にも承認され、いわき市に双葉郡6町2村(双葉町、広野町、楢葉町、富岡町、大熊町、浪江町、川内村、葛尾村)をホームタウンに加え、J3リーグライセンスを取得。徐々に市民権を得るようになり、2022シーズンからJ3に参戦すると、1年目の優勝かつJ2昇格という離れ業を演じJ2に昇格する。

2023シーズンから参戦するJ2では、初年度は残留ラインぎりぎりの18位、昨2024シーズンは9位と、やや足踏みしている印象だが、昨シーズンの平均観客数は4,249人を記録した。イス席は5,212席、他の1,188人は芝生席であることでやや手狭だったことは否めない。


Jリーグ 写真:Getty Images

「いわきを東北一にする」

そんな中、新スタジアムの収容人数をJ1クラブライセンス基準に届かない1万人前後とした点では、大風呂敷を広げることなく、身の丈に合ったサイズにしたことで好感が持てる。周辺にさらなる賑わいを創出できそうなこの計画に対し、クラブライセンスを判断する第三者機関(FIB)が杓子定規的に「(J1基準の)15,000人に届いていないからダメ」という判断を下したならば、逆に批判を浴びる可能性もあるだろう。