ただし、このプロセスが完璧に機能した場合の問題点は、すべてのメスが赤い羽のオスを選んだ場合、すべての個体の羽が赤色に近くなり、色の多様性が失われる可能性があることです。
これでは、メスの好みが時間とともに変わる現象を説明できません。多様性がなければ、メスは好みを移ろわせることができなくなるからです。
そこで研究者らは、この問題に対処するために、現実世界で起こり得る要素をモデルに追加しました。それは「若いメスが経験豊富なメスの選択理由を間違って解釈する」という事象です。

たとえば上の図では、経験豊富なメスは「赤い羽」に魅力に感じてオスを選びましたが、観察する若いメスは「長い尾」が魅力的だと学習しています。
研究チームは、数学モデルに「若いメスが間違いを犯す可能性」の考慮をくわえ、シミュレーションを行いました。
すると、現実世界と同じように、メスの好みが時とともに変わることが確認できたのです。
さて、これは「なぜ」起こったのでしょう?
「モテ男」の特徴が一般化されると「モテなくなる」
メスが他のメスから学び、同じ特徴(例:赤い羽)を持つオスを選ぶと、その特徴は集団内で広まります。その結果、他の特徴(例:青い羽)は減少していく傾向があります。
しかし、メスが珍しい特徴(例:青い羽)を持つオスを選びはじめると、他のメスもその行動を真似し始めます。この影響は大きく、シミュレーションでは、マイナーな特徴が短期間でメジャーな特徴を上回ることも確認されています。
さらに時間軸を長くとった観察では、マイナーだった特徴が増えすぎて「一般化」することで、メスにとっての魅力が減ることが確認されています。