この進化で有名な例は、クジャクの長く美しい尾羽です。この尾羽は生存には不利ですが、メスへのアピールとしては非常に有用です。

クジャクの生存には不利であるかもしれない長い尾は、メスに交尾の相手として選ばれる。
クジャクの生存には不利であるかもしれない長い尾は、メスに交尾の相手として選ばれる。 / Credit: Wikipedia

ただし、メスがオスを選ぶのは、クジャクの尾のような目立つ特徴だけでなく、他の遺伝的に有利な生存能力、繁殖能力も考慮されます。

性淘汰は多様な形で現れ、その理論もさまざまに展開されています。しかし、これまでの性淘汰の理論では、「同じ種でありながらオスの特徴が多様である理由」や、「メスの好みが個体によって異なり、また時間とともに変わる理由」を説明することができませんでした

この問題を明らかにするため、米国フロリダ州立大学(Florida State University)の研究者たちは、数学モデルを用いてシミュレーションを行いました。

その結果、動物がどのように交尾相手を選ぶのか、そしてなぜ同じ種の個体でも好みが異なるのかを説明しました。

メスは「他の女子」に選ばれしオスを選ぶ傾向がある

この研究で用いられた数学モデルは、新たに提唱された「推測される魅力(Inferred Attractiveness)仮説」に基づいて作られたものです。

「推測される魅力仮説」とは、メスが他のメスの交尾相手選びを観察し、その情報に基づいて自分自身の交尾相手を選ぶという仮説です。具体的には、以下のようなプロセスが含まれます。

  1. 若いメスは、経験豊富なメスがどのオスを選ぶかを観察し、「オスの魅力」についての一般的な見解を学ぶ
  2. 若いメスは、「選ばれしオス」と「選ばれなかったオス」を比較し、どの特徴や特性が選ばれしオスの際立った魅力であるかを学習する
  3. 若いメスは、その後の交尾選択で、学習した特徴・特性に最も合致する相手を選ぶ

例えば、「経験豊富なメスが赤い羽のオスと一緒にいるのを見た若いメスは、赤い羽を持つオスを交尾相手に選ぶ可能性が高くなる」というのがこの仮説です。