後藤:そうですね。さらに、リーダーと部下はそもそも求められる基準が違います。例えば、部下が営業成績をどんどん伸ばしたときに、リーダーが「自分のポジションが危うくなる」と感じてしまうと、本来必要な部下の成長を阻害することになりかねません。リーダーは「組織全体のパフォーマンスをどう上げるか」に集中し、部下とは違う基準で自らの成長を求めていくことが重要だと思います。

黒坂:では最後に、「部下に考えさせる機会を与えること」について話したいと思います。

問題が発生したとき、部下が「どうしたらいいですか?」とすぐに答えを求めてくることがありますよね。しかし、リーダーが即座に答えを与えてしまうと、部下の成長機会を奪ってしまうことになります。そのため、「あなたはどう考えますか?」と問いかけ、仮説を持たせる習慣をつけることが大切だと思います。

後藤:おっしゃる通りです。要は「質問力」が大事になってきますね。部下に自らの責任で考え、実行し、それを経験として蓄積させる。そのためには、適切な質問を投げかけることが必要です。 また、部下の経験値やスキルに応じて、考えさせる範囲を段階的に広げることも重要です。最初から「なんでも考えていい」とすると、方向性がズレる可能性があるので、成長に応じて徐々に裁量を広げていくアプローチが効果的ですね。

黒坂:そうですね。最後のポイントですが、「長期的な視点で部下の成長を支援すること」も大切です。

リーダーとしては、どうしても短期的な成果を求めがちですが、成長には時間がかかるものです。そのため、粘り強くフィードバックを続けたり、勉強会への参加を促したり、長期的なキャリアを一緒に考えることが必要です。こうした積み重ねによって、部下も「ここまで考えてくれる上司には恩返しをしたい」という気持ちになり、結果的にロイヤリティの向上にもつながると思います。

後藤:まさに「時間軸」の視点ですね。短期的な視点だけで成長を求めると、逆に部下の伸びを阻害してしまうこともあります。リーダー側も、部下側も、それぞれが「今の状況は長期的な視点でどう意味があるのか?」を意識することで、より良い関係性を築くことができるのではないでしょうか。