保存状態が非常に良好だったため、腹部の微細な構造まで観察できたのが大きなポイントでした。最大の見どころは前のセクションでも触れた「腹の先端にあるふたのような板状のパーツ」(以下「ふた」と呼びます)が上下2枚、中央1枚の合計3枚重なっていることです。
この「ふた」がどのように動き、何のために機能していたのかを解明するため、研究チームは微小CTスキャンという特殊なX線撮影を実施。琥珀を破壊することなく、その中の構造を3次元的に可視化できる方法です。
すると、ある標本ではふたが閉じた状態、別の標本では開いた状態で保存されていることを突き止めました。さらに腹の内側には、ふたを動かすために筋肉が取り付いていた痕跡も確認。
これらのデータを総合すると、獲物をパチンと挟んで逃げられなくする仕掛けだった可能性が濃厚だとわかったのです。
より具体的には
3枚の「ふた」が重なっている
おしりにあたる腹部の先端に、上下2枚と中央1枚の板状パーツがあり、それぞれ独立して動ける構造が確認されました。
長い毛(トリガーヘア)がセンサー役
「ふた」の縁には長い毛があり、獲物が触れた際に感知して瞬時に閉じるきっかけになると考えられます。
内側にトゲ状構造
微小CT画像から、「ふた」と「ふた」が合わさる内面に小さなトゲが並んでいることが判明。獲物を挟み込んだ際に逃げにくくする仕組みとみられます。
捕獲と同時に産卵や毒の注入が可能
「ふた」のすぐ近くには産卵管(毒針を兼ねる場合も)と考えられる針があり、獲物をしっかりホールドしたまま刺したり卵を産みつけたりできたようです。
という結果が得られました。
これらを総合すると、この化石寄生バチは後方に待ち伏せして、獲物が近づくと“ふた”をパチンと閉じて捕らえ、逃げられないうちに産卵や毒の注入を行ったと想定できます。
現代の多くの寄生バチが前脚や顎でホストをつかまえるのとは異なる、きわめてユニークな戦略だったわけです。