ソルダトフ氏の前で、参加者の一人である女性が話をしていた。ソルダトフ氏の父親は今、ロシアで投獄されている。「釈放に向けて、お手伝いしたい」という女性に、ソルダトフ氏は「今はそっとしておいた方が良いと思う。状況が読めないから」と答えていた。

ソルダトフ氏が本にサインをしている間、ロシア語と英語で報道する独立メディア「メデューザ」の話になった。ラトビアに拠点を置くメデューザはロシア語の独立系サイトとしては最大手とされている。

ロシア政府の批判をいとわないメドゥーザは、当局による言論統制の対象となってきた。2021年5月には、「外国の代理人」と指定された。「スパイ」という意味である。これを機に、ロシア国内の企業からの広告収入は事実上、全滅した。ロシア国内でのサイトへのアクセスは封鎖されているが、私設通信網「VPN」を利用してやってくる人が多いという。メドゥーサは海外からの購読支援に力を入れており、ウェブサイトを通じて寄付ができる。

メドゥーザの名前を出すと、ソルダトフ氏は「メドゥーザの記事にコメントを書いたら、ロシア政府から刑法違反の通知が、今日届いた」と語った。

「外国のスパイ」とされるウェブサイトにコメントを残しただけで、そうなってしまうのである。

編集部より:この記事は、在英ジャーナリスト小林恭子氏のブログ「英国メディア・ウオッチ」2025年2月26日の記事を転載しました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、「英国メディア・ウオッチ」をご覧ください。