しかし、欧州にとっては「敵」のために結束する機会だ。いつか、ロシア側が米国を裏切るときがくるはずだ。米国抜きの北大西洋条約機構(NATO)があり得るのかどうかも考えざるを得なくなる。いずれにしても、欧州諸国は国防費を大幅に増やすべきだと思う。

ソルダトフ氏:思い出してほしい。1991年のソ連崩壊時、プーチン氏はKGBの中佐だった。(注:プーチン氏は1985年から90年までKGB職員として東ドイツ・ドレスデンに派遣されていた。1989年秋のベルリンの壁崩壊から次々と東欧諸国が民主化し、1991年12月、ソ連が解体・崩壊。プーチン氏は1991年6月からレニングラード=現サンクトペテルブルク=の職員に。1991年8月、KGBの辞表願い受理された。)

プーチン氏は何が起きているのかを全く理解できていなかった。全く何も手を打つことができなかった。

ソ連政府がいうほどに情報機関が最高のレベルであったのなら、なぜソ連を崩壊させてしまったのか。体制を救うために、全力を尽くすはずだ。しかし、全く何もしなかった。プーチン氏も含めて、だ。だから、体制が変わる希望はある。

リヒテロヴァ氏:あなたが誰かによって、できることは異なる。NATOの事務総長だったら、加盟国が恐怖に陥っている状態を鎮静化しないといけないし、欧州諸国だったら、結束する必要がある。ロシアの近隣諸国だったら、ロシアが旧東欧諸国に攻撃をしないよう行動する必要がある。

私は学生に教える立場にいるので、何が起きているかを学生に伝えている。できることをやることだ。小さなことでもいい。

もしあなたが西側政府の情報機関の人間だったら、トランプ大統領や(その側近のIT起業家)イーロン・マスク氏に何が起きているのかを教えることだ。

トークが終わり、筆者はソルダトフ氏の著作の1冊を抱えて、パネリストの席に向かった。この著作はソ連の情報機関の活動を書いた「レッド・ウェブ(The Red Web: The Struggle Between Russia’s Digital Dictators and the New Online Revolutionaries)」である。