欧州は、ロシアに対する経済制裁がブーメランとなって、エネルギー価格の高騰を招き、全般的な物価高に苦しむことになった。これが基幹的であるドイツの自動車産業などにも深刻な影響を与えてしまっている。その結果、欧州各地で、極右とされる政党が勢力を伸ばした。

初期の欧州のウクライナ支援を主導したボリス・ジョンソン英国首相は、早々と退陣した。やはり急先鋒の一人だったドイツのベアボック外相を擁したショルツ内閣は、選挙での無残な大敗を喫して退陣した。代わりに勢力を広げたのは、極右政党と分類されるAfDだ。フランスではマクロン大統領が続投しているが、ルペン氏ら右派勢力の伸長にさらされており、薄氷を踏む国内政治運営を強いられている。もう一つの主要国であるイタリアのメローニ首相は、ウクライナ支援を掲げながら高い人気を誇っている例外的な存在だが、もともとは極右と言われていた人物で、トランプ大統領に最も親しい欧州の指導者でもある。ハンガリーのオルバン首相のようにEUの方針に公然と異を唱える指導者も現れてきた。EUのフォンデアライエン委員長やカラス外交安全保障上級代表は、選挙の洗礼を受けないため、従来の路線を守りながら職にとどまり続けると思われるが、選挙で議員が選出されるEU議会では右派政党が勢力を伸ばしており、各国の国内政治との乖離が露呈しないとも限らない。

ロシアの全面侵攻から3年がたち、欧州全体が疲弊し、変化を余儀なくされている。ロシアに対する経済制裁と、ウクライナに対する武器支援で、「ウクライナは勝たなければならない」の方針を容易に実現できると考えた見込みが、甘かった。なぜこんなことになってしまったのかを念頭におきながら、カラス氏ら対ロシア急進派の発言を改めて見てみると、思うところがある。

ロシアを罰する、ロシアを弱める、ロシアを懲らしめる、という動機づけが先行しすぎている。ロシアを痛めつけることができる可能性があるのなら、それはやってみるべき政策だ、という考えにとらわれすぎている。結果として、その政策が自分たちも弱体化させるのではないか?という疑問を過小評価してしまう傾向が顕著だ。あるいは仮に自分たちが弱まっても、ロシアを懲らしめることができるなら、あえて国民に我慢を強いてでも実行しなければならない、という考えにとらわれすぎている。