プロトタキシテスという化石が最初に学界で注目されたのは、約160年前の19世紀半ばでした。

そのころの研究者たちは、断片的な化石から見えてくる“巨大な管状の構造”に強い衝撃を受け、「原始的な針葉樹のような巨大植物ではないか」「菌糸(キノコの繊維)にそっくりだから大型キノコでは?」といった多彩な説をめぐらせました。

一部には「地衣類(菌類と藻類の共生体)の祖先が巨大化したのでは」という大胆な推測まで飛び出し、確固たる結論に至らないまま長い時を経てきたのです。

そもそもプロトタキシテスが生きていた約4億年前のデボン紀初期は、地球上にまだ大きな森林が出現していませんでした。

もしこれが本当に“巨大キノコ”だったとしたら、草木の少ない地表で何を分解して栄養を得ていたのか、あるいは植物に近い特徴をもつなら光合成をしていたのか──それらはどれも、古代の陸上生態系を考えるうえで大きな興味を引きます。

また藻類説に基づけば、海にいた生物が一時的に陸へ進出した可能性まで想定でき、学説はめまぐるしく入れ替わっていました。

実際に過去には、同位体比の分析から「光合成とは違うパターンを示すため、他の生物を分解する菌類のようだ」と報告され、“巨大キノコ説”が一時的に強まったことがあります。

しかし、植物に多いフェノール性物質が見つかったとするデータも発表され、「やはり植物寄りかもしれない」と再び考えがひっくり返る──そうした論争が絶えず起きてきたのです。

こうした混乱に新しい視点をもたらしたのが、スコットランド北東部の「Rhynieチャート」です。

約4億年前の陸上生物がタイムカプセルのような状態で残されており、初期の植物や小さな節足動物、菌類なども同じ地層から見つかっています。

保存条件がほぼ共通していることから、同じ環境にいた仲間として、化石同士を直接比較しやすいのが大きな特徴です。

実際、ここから出た真菌の化石にはキチンがはっきりと残っており、プロトタキシテスとの違いを照らし合わせる絶好の材料にもなりました。