4億年も昔、いまだ大森林が地上を覆う前の時代──その地表には、高さが最大8メートルに達した可能性がある「巨大キノコ」のような姿がそびえ立っていたと、長らく信じられてきました。

化石の名称は「プロトタキシテス (Prototaxites)」。専門家のあいだでは「これは古代の菌類だ」という説が根強く、一部には「巨大な藻類」や「極めて原始的な針葉樹」といった主張もあり、19世紀半ばの発見以来、約160年以上にわたり学説が大きく揺れてきたのです。

ところが、イギリスのエディンバラ大学(University of Edinburgh)で行われた研究によって、この生物が既知の植物でも動物でも、さらには菌類ですらないことを示す証拠が明らかになりました。

この発見は、古代陸上生態系のイメージを根本から変えうるもので、植物や菌類の進化史からはみ出す「未知の多細胞生物」が、かつて数メートルから8メートル級の巨体で大地に根を下ろし、その土地の生態系を支えていたとしたら──と想像をかきたてます。

いったい、この不可思議な生物の正体は何なのでしょうか?

研究内容の詳細は『bioRxiv』にて発表されました。

目次

  • プロトタキシテスの正体:植物か、菌類か、別次元か?
  • 4億年前、地上を覆った“偽巨大キノコ”

プロトタキシテスの正体:植物か、菌類か、別次元か?

4億年前に植物でも動物でも菌類でもない未知の多細胞系統がいた可能性があると判明
4億年前に植物でも動物でも菌類でもない未知の多細胞系統がいた可能性があると判明 / この図は、共焦点レーザー顕微鏡(CLSM)やAiryscan技術を利用した高解像度画像と3D再構築結果を示しています。ここでは、プロトタキシテスの内部に存在する3種類の管状組織(細い管、太めの管、そして特有の厚みを持つ管)と、それらがどのように複雑なネットワークを形成しているかが明確に描かれています。また、メドゥラリースポットにおける管の連結パターンの詳細な解像が、従来の真菌の菌糸構造とは大きく異なることを示しています。/Credit:Corentin C. Loron et al . bioRxiv (2025)