審判委員会は今季のファウル基準について「ファウルには当然笛が吹かれるべき」と釈明したが、突然ともいえる基準の変更に付いては、選手からも不信感を抱かせ、ヴィッセル神戸FW大迫勇也も「大丈夫かJリーグ」とコメントするほどの事態に繋がっていた。
この混乱の背景として、審判委員会が「ノーファウルに笛を吹かない」という方針を強調されすぎたことで、現場の審判に過度なほどに「流す」ことを意識してしまったことが大きな要因であることは明白だろう。
JFAの意図は試合の流れを止めずAPTを増やすことだったのかも知れないが、実際にはファウルの基準が曖昧になってしまい、逆に選手の安全が損なわれる可能性が高まっただけという結果を招いている。扇谷委員長と同様に元プロフェッショナルレフェリーだった佐藤隆治審判マネジャーは具体的な事例を挙げて説明したが、これで誤解が解けたかと問われれば「否」と言わざるを得ない。
あまりにも納得させる材料に乏しいのだ。いっそのこと「今季からファウルの基準を緩和しました」と断言した方がよっぽど納得できると思われるが、そんなことをすれば批判の矛先は、宮本恒靖会長や野々村芳和Jリーグチェアマンに向かいかねない。責任の所在をうやむやにすることで、審判員のみならず“上役への忖度”も伺わせる。

W杯予選バーレーン戦のアルジャシム主審
3月20日に開催されたFIFAワールドカップ北中米大会アジア最終予選の、日本代表対バーレーン代表(埼玉スタジアム2002/2-0)を裁いたのは、アブドゥルラフマン・アルジャシム主審をはじめとするカタール人審判員だった。この人選が発表された際、一抹の不安を覚えた。いわゆる“中東の笛”が吹かれることへの危惧ではなく、むしろ逆である。
バーレーンとカタールは、カタールがテロ集団に資金提供を行っていたことや、イランとの接近などを理由として2017年から国交を断絶し、2023年4月にサウジアラビアのリヤドで行われた協議において、国交回復に合意したセンシティブな関係にある。