※2025年3月20日現在の最大割引値。米iRobot社は3月22日まで
では、安全性はどうか。こちらも惨憺たる状況だ。
自己資本比率が「68%」から「12%」へ低下
自己資本比率は長期安全性を示す指標である。「12%」は、日本の製造企業全体の「50.8%」よりはるかに低い。日本の零細製造企業全体の「20.3%」にも及ばない(※)。もし、前年度と同レベルの赤字(△1億3千万ドル)が、今年度も続けば「債務超過」に陥る可能性が高い。
※令和6年9月2日財務省報道発表「年次別法人企業統計調査」2023年値。資本金1千万円未満の企業を零細企業とする。
現在のiRobot社は、収益性・安全性とも「心許ない状態」と言える。
では、今後の成長性はどうか。これも厳しい。研究開発をする余裕がないからだ。iRobot社は、研究開発費を「1億6千万ドル」から「9千万ドル」へ、およそ40%削減している。今後、中国勢との競争が激化するにもかかわらず、である。
こうせざるを得ないほど、今のiRobot社は追いつめられている。悪化要因の一つは「コアコンピタンス」が獲得できなかったことだ。
コアコンピタンスなき専業企業
コアコンピタンスとは「自社の中核となる能力」のことを言う。単なる強みとの違いは、様々な用途に展開できることだ。
わかりやすい例は、ダイソン社である。同社のコアコンピタンスは「デジタルモーター」である。軽量、長寿命、そして超高速回転。13万5,000回転(/分)は、実にF1エンジンの9倍だという。ダイソンは、この自社開発モーターを活用し、掃除機はもちろん、ハンドドライヤー、扇風機、空気清浄機、果てはドライヤ―まで「空気を動かす」こと全てに事業を拡大している。

第5世代Hyperdymiumモーター ダイソン株式会社プレスリリースより
残念ながら、iRobot社には、このようなコアコンピタンスが見当たらない。現在、公式サイトにある掃除ロボット以外の製品は、空気清浄機と子供向け学習ロボットだけ。ルンバのナビゲーション技術は、コアコンピタンスとはなり得ず、新事業を創出することはできなかったのだ。