またオスの蚊の聴覚は、パートナーを探すだけでなく、彼らの欲望をかき立てるのに役立つようです。

研究チームがそれぞれのオスに、メスの羽音を聞かせたところ、遺伝子編集されていないオスは腹部を突き出して反応を示したにもかかわらず、耳の聞こえないオスはピクリとも動かしませんでした。

ほとんどの生物では、交尾行動が複数の感覚刺激の組み合わせで成り立っているため、モンテル氏は、オスの蚊について、「感覚を1つ奪うだけで交尾行動が完全に無くなるというのは興味深いことだ」と述べています。

ちなみに、今回の研究では、オスとメスで差が生じる理由は詳しく分かっておらず、この点は今後の研究で調査される予定です。

そして今回の成果によって、蚊対策の新たな道が開く可能性があります。

聴覚の遺伝子を利用した新たな蚊対策

感染症を媒介するネッタイシマカの個体数を減らすため、今回の研究は役立つでしょうか。

研究チームは、単にオスの蚊の耳を聞こえなくしたところで効果は薄いと考えています。

なぜなら、一部のオスの遺伝子を編集して交尾できなくしたとしても、他の野生のオスの蚊は、何度でも交尾を繰り返すことができるからです。

交尾をしないオスの代わりに他のオスがたくさん交尾をするだけなのです。

そのため研究チームは、今回の研究と既存の「不妊虫放飼」を組み合わせる方法を考えています。

不妊虫放飼とは、害虫駆除の方法の1つであり、人工的に不妊化した害虫を大量に放すことで害虫の繁殖を妨ぎます。

実際、特定の害虫においては、この方法で個体数を減らすことに成功しています。

しかし、蚊においてはそこまで成果が上がっていません。

だからこそ、今回の研究と組み合わせるのです。

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不妊化したオスの聴覚を過剰に活性化するなら、個体数を減らすことに繋がるかもしれない / Credit:Canva,ナゾロジー編集

まずオスの蚊(ネッタイシマカ)を不妊化させます。