交尾を繰り返すオスの蚊によって、蚊はどんどん増えてしまうのです。
蚊の個体数の増加は、蚊が嫌いな私たちを一層イライラさせるだけではありません。
ネッタイシマカは吸血する際の唾液で黄熱、デング熱、ジカ熱などの感染症を媒介する害虫であるため、人間にとって脅威なのです。
実際、ネッタイシマカによって年間4億人が感染し、そのうち約1億人が病気を発症しています。
では、ネッタイシマカの個体数を減らすために、効果的な方法はあるでしょうか。
モンテル氏ら研究チームは、ネッタイシマカの交尾に不可欠な「聴覚」に着目し、新たな蚊対策の道を開こうとしました。
耳が聞こえない蚊のオスは交尾をしない
今回、モンテル氏ら研究チームは、蚊の聴覚が彼らの交尾に影響を及ぼすと考えました。
そこで彼らは、ネッタイシマカの聴覚を失わせるため、聴覚と関連している遺伝子trpVaをノックアウト(遺伝子の機能を人工的に失わせること)しました。
このように遺伝子編集された蚊は、音に対して全く反応を示さず、聴覚と関連するニューロンでは電気活動も検出されませんでした。
研究チームは、遺伝子編集により、ネッタイシマカの耳を聞こえなくすることに成功したのです。
次に彼らは、耳の聞こえなくなった蚊を遺伝子編集していない蚊の集団の中に入れてどうなるか観察しました。
その結果、耳の聞こえないメスの蚊は、通常よりも苦労したものの、パートナーを見つけ交尾を成功させました。
このことは、メスが交尾相手を探すのに聴覚だけに頼っていないことを示しています。

一方、耳の聞こえないオスは、メスたちに全く反応を示さず、遺伝子編集されていないオスが数分の間に何度も交尾するのをただ見ていました。
モンテル氏も、「メスの羽音が聞こえないと、オスは興味を示さなかった」とコメントしています。