「緑の青葉」という表現が気になっていた人には興味深い発見です。

米国のMIT(マサチューセッツ工科大学)で行われた研究によって、外国語を学ぶと色の解釈に変化が現れることが示されました。

欧米をはじめとした先進各国が使う言語では基本的な色(赤・青・緑など)を表現する単語が主に12個ほど存在しますが、孤立した地域の言語では、基本的な色用語が少ない場合があります。

たとえば南米のアマゾンに住むチネマ族では色を示す言葉は基本的に「黒・白・赤」だけであり、黄色・緑色・青色については限定的に使用されるのに留まっています。

そこでMITの研究者たちはこれらチネマ族の人々が多くの色表現を持つスペイン語を習得した場合に、色についてどのような概念のシフトを起こすかを調査しました。

研究ではまず最初のページで言語が「青」や「緑」を獲得する過程を紹介し、次のページでは研究内容を解説したいと思います。

前半部分は主に前提知識についての「まとめ」になるため、詳しい人は軽く読み飛ばして2ページめから読み始めて下さい。

研究内容の詳細は2023年10月31日に『Psychological Science』にて掲載されました。

目次

  • 古代の文献では「青色」という単語が存在しない
  • 外国語の学習は色の概念を変えてしまう

古代の文献では「青色」という単語が存在しない

古代の文献では「青色」という単語が存在しない
古代の文献では「青色」という単語が存在しない / Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

ウィリアム・グラッドストンは古代ギリシャ人の叙事詩を分析するなかで、奇妙な事実に気が付きました。

古代ギリシャ時代の文章では「ワイン色の海」「ワイン色の牛」「緑色のハチミツ」など色彩の表現について奇妙な表現をしており、特に青色を意味する単語が全く見られなかったのです。

そのためグラッドストンは大著『ホメロスおよびホメロスの時代研究』を書き上げる際に、その最後に「古代ギリシャ人の色彩感覚が異常である」ことを指摘する、小さな章を加えました。