これは誰も責められない。責めを負うとすれば、デフレ不況への対策が遅れた政府だろう。しかし、これも、東日本大震災という有事が足踏みをさせたと言えなくもない。
何故、旧民主党が悪夢の民主党時代と言われるかと言うと、東日本大震災復興を足がかりに、日本経済の立て直しそのものに着手する大きなチャンスだったのに、みすみすその機会を逸したことだ。あまつさえ、消費税の更なる引き上げという愚策を行なった。
デフレ期待とゼロ金利政策でも設備投資に及び腰な企業により、日本はデフレ不況から抜け出せない。
フィードバックループ(価格上昇期待によるバブルと下落期待による停滞)現象が起きている日本経済の閉塞感を打破する策として、政府の財政出動とインフレ期待を呼び込む方策として選択されたのが、世界の誰も思っても出来なかった大規模金融緩和だ。
大規模金融緩和(マネタリーベースの増加)によって、政府と日銀としては、市中により多くのお金が流れること(マネーサプライの増加)を目的にしていた。しかし現実は、貸出リスクを勘案した金融機関の腰が引けた状態になっていて、マイナス金利であっても金融機関は日銀当座預金にお金を預けっぱなし。その額が2023年時点で500兆円にまで膨らんだ。
アベノミクス以後、有効求人倍率と株価は上昇し、円安傾向になったとは言え、大規模金融緩和の影響が市場に出るには、決定的に欠けていたものがある。
それがアベノミクス第三の矢である構造改革だ。
金融市場を動かすことには効いたけど、実体経済に影響を与えるまでは行ってない。そして道半ばで安倍晋三元総理は病に負け暗殺されてしまった。
その後、アベノミクスは失敗だったとする論調が、一部で囁かれることになる。
では、本当にアベノミクスは終わったのか?
次の拙稿で、その点について踏み込んでいきたい。
【参考】
フィードバックループ(feedback loop) Robert Shiller: In Irrational Exuberance, Shiller uses behavioral economics to frame Japan’s experience as a “feedback loop”—rising price expectations fueled the bubble, and falling expectations deepened the stagnation. His CAPE ratio analysis highlights the bubble’s overheating and subsequent overcorrection.