フォンデアライエン欧州委員長は「資金供給枠組みや財政ルール緩和などを通じ、防衛強化のために総額8,000億ユーロ(約129兆円)の資金確保を目指す」と説明し、トランプ米政権が欧州に要求する抜本的な防衛増強に応える姿勢をみせた。

このEUの決断は今後、欧州全体の様々な分野に影響をもたらすだろう。

例えば、経済面ではGDP比2%以上の軍事費増強を強いられる国が多く、一部の国では社会保障費の削減が懸念されている。軍需産業が活性化し、新たな雇用や技術革新が生まれる可能性がある一方で、民需の製造業や輸出産業が圧力を受ける可能性がある。また軍需に前のめりになることにより国民生活を営む物資の不足が心配されている。

社会面では国民の介護や健康、教育など他の分野への予算配分が減少する可能性がある。また市民生活が変化し、移民に対する排斥運動が激化するおそれがある。

地域間の不均衡が生じることも考えられる。東欧諸国は地理的な要因から防衛意識が高く、軍事費を積極的に増加させているが、西欧諸国では、これまで防衛が米国頼みだったこともあって、社会保障を優先させる傾向が強い。こうした地域間の格差は、これまでEUとして結束してきた経済政策や社会構造に大きな変化をもたらす可能性がある。

まとめ

「平和とは、世界各国が次の戦争のために休戦し、兵士の増加・訓練、軍備の整備、兵器の大量生産や革新に専念して、来るべき戦争に備えている期間に過ぎない」という平和の本質についての考察がある。いみじくも、今回のロシアのウクライナ侵攻はその考察を証明してしまった。ロシアの脅威に対して、今回、EUが再軍備と軍事費増強を決断したのは、これまでの歴史を振り返れば、極めて正しい判断と言える。

一方、ロシアの隣国である日本はどう対応すべきなのだろうか。未確認ながら、ロシアがウクライナ侵攻前に日本への侵攻も検討していたという情報がある以上、無防備というわけにはいくまい。