派閥政治資金パーティーの還流金の「裏金」は、「収支報告書に記載しない金として供与されたもの」なので、政治団体ではなく、政治家個人宛寄附と捉え、「21条の2」の規定を適用する方向で捜査するべきだった。そうすれば、政治家個人に帰属したことを前提に、雑所得としての所得税の課税も可能だった。
検察が、その規定を適用せず、「無理筋」の資金管理団体、政党支部の「収支報告書虚偽記入罪」に問うという誤った方向の捜査を行い、政治団体への寄附であったとして収支報告書の訂正をすることで済ませてしまったために、「裏金議員」の処罰は、現時点では、谷川弥一元衆院議員の略式罰金のみにとどまり、虚偽記入罪で起訴された池田・大野議員も、公判の見通しすら立っていない。
「裏金議員」は、処罰を免れただけでなく、本来、行うべき所得税の納税すら行わず、それが、国民の激しい怒りを買うことになった。
この裏金事件を含め、検察が、政治家個人宛寄附を禁止する「21条の2」の規定を適用した事例は、皆無なのである。まさに、典型例であった「政治資金パーティー裏金問題」でも検察が適用しようとしなかったことからも明らかなように、この規定は、事実上「死文化」している。
この問題は、私の検察での捜査経験に基づき、Yahoo!記事や、様々なメディアで繰り返し指摘してきたし、近く公刊する拙著『法が招いた政治不信』でも、詳しく述べている。

西田昌司参議院議員は、
「石破さんはそういうことを一番言ってきたタイプの人だ。なぜこういうことになっているのか」
と苦言を呈した上、
「予算を通したら、もう使命を果たしたのだから、退陣されるのが正解だ」
と述べたとされているが(3.14付け毎日)、安倍派の政治資金パーティー裏金問題で411万円の還流金を認めている議員の発言とは思えない。「裏金議員」として、本来「21条の2」違反の刑事責任を問われる可能性があったことを認識すべきであろう(西田議員には、【上記拙著】を謹呈し、是非お読み頂きたいと考えている。)。