しかし年次ごとに子産み期を卒業した人たちが何人子どもを産んだかの実績を示すコーホート合計特殊出生率は、1980年代後半まで横ばいだったのです。

つまり期間合計特殊出生率は、子どもを産む時期を後ろに延ばす行動を産む子どもの数を減らす行動と見誤っていたのです。

賢い日本の女性たちは生涯に産みたい子どもの数は減らさずに、もう少し子どもを産みやすい環境になるまで産むタイミングをずらしていました。ところが、子産み、子育ての環境は良くなるどころかどんどん悪化してしまったのです。

この環境の悪化には、もちろん経済成長率の鈍化も影響していますが、女性が子どもを産み育てながら正規雇用で安定した職を維持して活躍できる条件が次々に取り払われてしまったことのほうが、はるかに大きな打撃だったでしょう。

こうして、3人子どもを産むつもりだった人たちがふたり、ふたり産むつもりだった人たちがひとり、ひとり産むつもりだった人たちが産まなくなってしまったことによって、日本は人口減少社会に転落していったのです。

こうして見てくると、女性の正規雇用を増やし、正規雇用の内実を男性とほぼ同等の職と給与の安定を保証するものとすれば、日本の経済活動も出生率も画期的に向上すると推測できます。

もちろんその過程で男性正規雇用社員ほぼ全員の定年までの給与保証はやっていけなくなるでしょう。

ですが、そのマイナスと、非正規・不定時・低賃金雇用か無職かの選択しかなかった多くの女性が、安定した地位と給与を得てバリバリ働け、自分のペースで子産み、子育てもできるようになることのプラスを比較すれば、圧倒的にプラスのほうが大きいでしょう。

「妹の力」を解放すれば、絶対に日本経済は高度成長を回復できます。

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