そして、ほんとうに画期的な技術革新が起きていたら、他産業の中からどんなに高いライセンス料を払ってでも、その技術を採り入れて業績が急成長する企業が出現して、やがて直接技術革新には関与していない産業の業界標準を変えてしまいます。

2004年までは資本財・中間財製造業の失ったシェアを他の3分野が少しずつ分け合うかたちで、技術革新の成果がその他の産業をも潤していた形跡が見られます。ところが、2014年以降の10年間は技術革新型企業群のシェアだけが激増して、その他3分野のシェアがすべて縮小しているのです。

つまり、たとえ企業家自身の目的は儲けることだったとしても、その結果として社会全体が豊かになるような技術革新がほんものの技術革新であるはずなのに、むしろ技術革新型企業だけが儲けて他産業は儲からないというのでは、花咲か爺いが隣の因業爺いになってしまったようで、おかしいのではないでしょうか?

これは決してそれぞれの業界の時価総額だけではなく、直近12ヵ月の累計利益額がどう変化したかを見ることによっても明白に跡づけることができることを、下段のグラフが教えています。

アメリカの上場企業全体をテクノロジー・メディア・通信産業(TMT)とその他全産業に分けると、2020年の第1次コロナ騒動による落ちこみと、その直後の「正常化」期待を反映した利益回復までは、幅の差はありますがほぼ相似形のパターンを描いていました。

ところが、2022年以降はまったく違います。TMTは大きな落ちこみのあと、その落ちこみを上回る増益を示したのに対して、その他全産業の利益は約2年半にわたってまったくの横ばいだったのです。

マグニフィセント7を先頭に、ハイテク企業CEOの大半が「自社ももっと儲かるけれども他社も儲かるようなビジネスをするよりは、自社の儲けは多少少なめになっても他社が儲からないような排他的なニッチを守り抜く経営をしたい」という因業爺いになってしまったというだけのことでしょうか。