しかし、量子力学ではこのような断絶は起こらず、すべての瞬間がスムーズに繋がっており、情報が突然喪失することはありません。
そこで研究者たちはブラックホールの内部の状態を、このような量子力学をベースにしたモデルへと書き直したのです。
具体的には、ブラックホールの中心部をできるだけシンプルに把握するため、「カスナー型時空」という簡略モデルを採用しました。
さらに、このモデルに「ユニモジュラー時間」という特別な“時計”を導入し、量子力学(小さな粒子の世界の法則)を使って解析を進めたのです。
すると、普通なら「特異点」という何もかもが押しつぶされる“終点”や、「ホライズン」という入り口・境界があるはずの場所が、なんと“バウンス領域”――つまり“跳ね返り”が起きる場に置き換わることがわかりました。
イメージとしては、ボールが地面に落ちるときに、そのまま地面に飲み込まれて終わりではなく、弾んで跳ね返るようなものです。
ブラックホールの中心で重力がぎゅうぎゅうに押しつぶすはずが、量子の効果で逆向きに跳ね返る動きが発生し、結果としてホワイトホール(物質や情報を外へ放出するような存在)へと繋がるかもしれない、という可能性が浮かび上がりました。
これは、従来の理論では「特異点で終わり」と考えられていたブラックホールの姿を、大きく塗り替えるかもしれない大胆なシナリオだといえます。
つまり、内部では本来ブラックホールに吸い込まれるべき状態が、時間反転的な進化を経て、ホワイトホールの性質を帯びた状態に切り替わるのです。
ブラックホール内部で物体がまっすぐ落ちていくのではなく、何かしらの「跳ね返り」作用によって逆方向に進むことで、情報が失われずに保存され、連続的な進化が保証されます。
結果として、ブラックホール内部は、内向きの状態(ブラックホール状態)と反転した外向きの状態(ホワイトホール状態)が重なり合った、時間反転的な進化が見られる領域になるわけです。