すると予想を上回る驚きの結果が得られます。

ブラックホールはホワイトホールに変化する

ブラックホールはホワイトホールに変化する
ブラックホールはホワイトホールに変化する / Credit:Canva

ブラックホール内部の特異点を量子重力的にみるとどうなるのか。

調査にあたってはまず、解決すべき問題を絞ることから始められました。

一般相対性理論では、ブラックホール内部の時空は、数え切れないほど多くの要素(ピース)で構成されており、すべてを一度に考えるのはほぼ不可能です。

そこで科学者たちは、「この中で本当に大切な部分はどこだろう?」と問い、ブラックホール内部の核心的な特徴、たとえば全体の体積や空間の歪みといった数個の重要な変数だけに注目しました。

つまり、膨大な情報の中から、本質を捉えるために必要最小限のピースだけを選び出し、シンプルなモデルとして扱ったのです。

この方法は、決して雑な近似や適当な単純化ではありません。

むしろ、ブラックホール内部のような極めて複雑なシステムの本質的な性質、例えば全体の体積の変化や時空の歪みといったキーポイントに焦点を絞ることで、解析可能な形に整理する非常に有効なアプローチです。

実際、1960年代にジョン・ウィーラーたちが、無限の可能性を持つ時空の状態全体(スーパー空間)から宇宙の大まかな膨張や縮小という基本的な動きを捉えたのも同様の手法だといえます。

問題が絞られると、次に研究者たちはブラックホールに量子力学を適用し、ブラックホール内部の状態を波動関数で書き表すことを目指しました。

ここで重要なのは、ブラックホール内部を量子力学で記述するとき、情報が「消えてしまわない」ように、すべての時間の流れが連続的かつ一貫していることを求める点です。

たとえば、古典物理をベースにした解釈では、ブラックホール内部に突入すると、まるで映画のワンシーンで主人公が突然崖から転落して物語が途絶えるように、時間の流れが突然切れてしまいます。