今回の研究は「正三角形から正方形へ、最も少ないピース数で変換する」という難題に、120年以上越しの明確な答えを与えました。

しかし、これですべてが解決したわけではありません。

むしろ、“3ピース以下では不可能”と示されたからこそ、今後は例えばピースを裏返してもよいのか、曲線で切ればどうなるのか、といった新たな疑問が浮上しています。

また、正三角形と正方形の組み合わせに限らず、多角形どうしの分割パズルや、三次元形状の分割最適化なども視野に入ってきます。

マッチングダイアグラムという手法は、一見単純なパズルの背後にある構造を論理的に整理し、多方面へ応用できる可能性を示唆してくれます。

たとえば薄い素材を無駄なくカットする工程や、ロケットの燃料タンクを効率よく切り出す設計などにも、最小ピース数の考え方が直接活かされるかもしれません。

実際、ピース数の少なさはそのままコスト削減や生産効率の向上に結びつくこともあり、学術界だけでなく産業界からも注目を集めています。

今回の成果は、数学やパズルの歴史だけでなく、ものづくりの未来にも大きな影響を与えうるものと言えるでしょう。

そうした広がりを踏まえれば、さらに新しい図形組み合わせや条件下での最適解を追求する研究も、今後ますます進んでいくと期待されます。

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元論文

Dudeney’s Dissection is Optimal
https://doi.org/10.48550/arXiv.2412.03865

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部